産地視察会 ~プレミアム天使の詩(うた)編~

日曜日は、佐賀県の優良産地2箇所を訪問しました。
今回は、いつものように単独ではなく、某卸会社主催の産地視察会に参加です。
いろいろと収穫がありましたので、ブログにも概要をメモしておきます。

少々長文のエントリーになる予定ですが、最後までご覧頂ければ、お米のことがよく分かるはずです。さまざまな情報がお米に関しても氾濫しておりますが、その情報を具体的に理解する術(すべ)になるはずです。

城田西カントリー
【写真奥の緑と赤の建物が城田西カントリー】

午前中はまず、佐賀県神埼市の“城田西カントリー”へ。

手前の白の建屋に“神崎郡千代田カントリーエレベーター”と書かれていますが、「カントリー」「カントリーエレベーター」とは、田んぼから収穫したお米を乾燥させて、籾(もみ)から籾殻を取り除き、玄米の状態にして貯蔵する施設です。単純にいえば、「集荷」と「調製」と「保管」の施設です。

一般の消費者からは見えない工程ですが、非常に重要な工程であり、食味や品質をかなり左右します。さまざまな大型設備が必要であり、とにかく費用がかかります。ですから、こういったように共同施設を建設し、地域で共同利用する形になっています。

こういったカントリーエレベーターのデメリットの一つが、地域のお米を一箇所に集め、一緒に調製処理する性格上、米作り名人のお米も、そうでない人のお米も混ざってしまうという点。

昔のいわゆる質より量の時代であれば、これで問題なかったのかもしれませんが、現在の嗜好品としてのニーズが高まった時代には、そぐわない面もでてきました。

じゃあ逆に、手間ではあるけど、名人や篤農家のお米だけを特別に集め、調製して、さらに厳しい基準を満たしたものだけを出荷したらいいのではないか?という考えから、ブランド化を進める元気な産地もあります。今回訪問した産地は、そういった産地です。

神埼の大豆畑 2013年9月8日
【佐賀県神埼市の大豆畑】

視察先の城田西カントリーの所在地、佐賀県神埼市は、佐賀平野に位置し“神埼そうめん”で知られています。ですが、なんといっても弥生時代の巨大遺跡である“吉野ヶ里遺跡”が有名でしょうか。古代からの農耕適作地。

北の脊振山系には、栄西禅師がお茶のタネを日本で初めて播いたといわれる霊山寺もあります。そこからさらに北に向かうと、福岡です。ちょうどお店から真南に神埼市があります。

市内を網目のように走る、クリークといわれる水路が張り巡らされています。クリークは一見すると川なのですが、水の流れはあまりありません。というのも、クリークは、ダムや溜池のような貯水が目的である人工の水路だからです。川くらいの幅、深さの水路で、性格は貯水池(ダム)なのです。

今年の8月は、全国各地で雨が降らず、北部九州も渇水の心配がありましたが、そんな状況下、佐賀県のダムの貯水率は約85%。そのうえ、神埼市にはクリークがある、といった状況でした。

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クリークから水を引くためなのか、圃場にはこういった設備が。

そうそう、この上の写真の田んぼは、見学先の田んぼではなかったのですが、ちょっと元気のない状態で気になりました。

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【状態のあまりよくない稲】

見て分かる通り、葉が途中で枯れています。田んぼの一画だけであればいいのですが。。。

それでは逆に、見学先のブランド米の稲はというと・・・。

プレミアム天使の詩 2013年9月8日
【プレミアム天使の詩の稲】

元気です。順調順調。ホッホッ穂。

パンフレットには、「誰に見られても、恥ずかしくない徹底した栽培管理をしている」という一文がありましたが、その通りでした。

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品種名は“天使の詩(うた)”です。数年前までは、当店でも普通に販売していて、なかなかの人気銘柄でした。

しかし、高温に強いともいえず、温暖化が進むなか毎年2等米だらけの状態が続きました(食味は良かったのですが)。2等米になると価格が下がるため、生産者には厄介な存在だったと思います。しかも栽培が難しい品種ときています。

そんな状況下、高温障害に強い新品種である“さがびより”が登場。米の食味ランキングで特Aを毎年取り続け、佐賀米ブランドの原動力に。その影で、この“天使の詩”の作付けは、みるみるうちに激減していきます。

今では、“天使の詩”を全国で唯一生産している生産地は、この城田西カントリーだけといった状態に。

しかし、もともと食味が良く、“さがびより”の母でもあり(父は、あいちのかおりSBL。病気に強い品種)、食味の潜在能力は折り紙つき。栽培方法の研究研鑽を重ね、土壌分析による肥料の選択、GPSによる施肥管理、種子生産まで厳密に行った結果、数年前より温暖化が進んでいるにもかかわらず、全量一等合格し、専門店からの引き合いも多く、今年は作付けを増やしています。

また、高度調製米ですので、タンパク質含有量検査に合格したうえ、大粒のものだけを選別したものが出荷されています。選別用の篩(ふるい)は、1.9mmを使用。篩から落ちた規格外のお米でも充分な太さがあります(一般的に加工用に使われる“くず米”は、太さが1.69mm以下のお米です)。

当店スタッフ一同
【当店スタッフ一同+おまけ2児で、天使の詩の圃場見学】

希少なため、今年、当店で取り扱いが出来るかどうか分かりませんが、お店のみんなで見学できて良かったです。

栽培→調製→精米

このどの段階で手を抜いても、お米の食味は著しく落ちます。また、その間の保管状況も大切です。当店は精米業務を担っているのですが、その重要性が体感できた視察会でした。

2013-09-08No[0132]

関東や関西の米穀店も、日帰り弾丸ツアーで多数参加されていました。
なにしろ視察先は全部田舎ですので、移動に時間がかかります。

この後、昼食をとり、当店ではおなじみの佐賀県相知町へ向かいます。
その模様は次回エントリーで。

 

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