お米を篩(ふる)うということ。

以前、産直で購入したときのお米が、小米(こごめ)選別の教材として有効だったので、今回アップしています。

小米というのは、精米時に砕けて割れたお米や、成熟できなかった小さい米粒のことをいいます。こういった小米が多く残っていると、食味を損ないます。

小米
【小米】

この小米、炊飯するとベチャベチャになります。たちの悪いことに、この小米は他の普通の米粒にかなり影響をもたらします。この小米だけがベチャベチャになれば、釜の中全体のお米には、そこまで影響はないのですけども。

というのも、炊飯中に割れた小米の断面から、中のデンプンがダダ漏れになるのです。その漏れだしたデンプンが炊飯中のお水全体にまわってしまい、全体に影響を及ぼしてしまいます。

ご飯粒が糊の代わりになることをご存知の方は多いと思います。炊きたてのご飯を紙の上にすり潰して、壁にくっつけると剥がれなくなります。いわゆるデンプン糊ですね。

小米の断面から漏れだしたデンプンが、炊飯中の水の中に漏れだし、水全体を糊状にしていきます(非常に薄い状態の糊です)。小米が多ければ、糊の濃度は高まっていきますから、結果どうなるかというと、他の真っ当なご飯粒の表面までもデンプン糊がコーティングしていきます。その結果、炊きあがりの表面はべちゃつき、乾くとカピカピの原因になります。

小米取りをしていないご飯
【小米取りをしていないご飯】

以前、産直で購入したご飯は小米取りが甘かったようで、炊きあがりは上の写真の通りでした。ご飯粒同士が、ペッタリとくっついている場所が多くあるのが分かります。ご飯全体の様子も、ひとかたまりになっているような感じです。

小米取り後のご飯
【小米取り後のご飯】

こちらは同じお米を、お店の小米取り機で篩(ふるい)にかけた後に炊いたご飯です。粒同士がはっきりしていて、ほぐれています。デンプンによる接着が軽減された証拠です。ほんの一手間かけただけで、炊きあがりがだいぶ変わりました(水加減も炊飯器も一緒です)。

デンプンのコーティングが抑えられているため、ご飯のツヤも出てきています(2つの写真のホワイトバランスが狂っていますので比較しづらいかもしれません。その点は申し訳なく)。ご飯の旨味層と言われる米粒表面の「亜糊粉層」が直接舌に乗りますので、ご飯の旨味や甘みも鮮明です。

篩(ふるい)を掛けただけで、見違えるように美味しくなりました。両方同時に試食したら、全く違うお米だと感じるでしょう。せっかく生産者が直に産直で販売していて、消費者も期待して購入されるのですから、もう少し篩選別してから販売したほうがいいのにな、もったいないな、と感じました。

先日受けた有機農業講座では、古野農場の新設精米ラインを見せて頂きましたが、米屋から見てもかなり充実の設備ぶりで、「産直」と一言で言ってもだいぶ差があります。

量販店の激安の米などでは篩選別の甘いものが多くありますけども、それはもうワザとですから、それはそれで価格に反映しているので別にといった感じですし、興味もありません。ご家庭によっては味より価格の場合も多々あるでしょう。

しかし、産直でこの状態は非常に惜しいです。価格を求めているお客さんよりも、美味しさを求めている方のほうが多いと思います。産直で販売されている方は、この点充分ご注意されるべきだと思います。

それと「家庭用の精米機」と、町中の「コイン精米機」のどっちを使ったらいいでしょう?という質問を受けるときがありますが、どちらも上記の小米選別はしないということは気に留めておく必要があります。

ご自身で精米されるときは、水分調整の効いた保管状態の良い、きれいな粒の揃った割れの少ない原料玄米を使用するのが一番の対処方法だと思います。それと割れないように優しく精米する精米機を選ぶこと。その点では、家庭用精米機のほうが有利ですが、原料玄米が粗悪だと同じです。

粗悪な原料玄米の場合は石の混入などもありますから、その点ではコイン精米機のほうがオススメですね。コイン精米機の場合は石抜き機を備えていますから、異物はある程度除去できます。

家庭用精米機の使い道は、「綺麗な玄米を購入し、ゆっくり時間をかけて精米して、精米したてのご飯の味を楽しむ」という、この一点だと思います。本来贅沢な装置なのです。

 

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