平成29年の秋から本格デビュー予定の新潟県の新品種「新潟103号」のサンプルが、当店に届きました。こんな福岡の小さい米屋にサンプルを2キロも送ってくれるなんて、デビューまでの布石が用意周到です。
ここ数年、新品種のデビューが多くて、全く追いつかない状況の中、こういった売り込み方法は非常に効果的です。その時点で新潟県の意気込みの本気度が伝わってきます。
現在国内で流通しているブランド米の中でもトップと国民に幅広く認知されている「新潟コシヒカリ」と双璧か、または超えようとしているわけですから、そのハードルはすこぶる高いはずで、そのことは当の新潟県自身が一番分かっているのでしょう。
一番驚いたことは、同封の資料の食味分析チャートの項目。
「コク」、「味の厚み」、「濃さ・ボディ感」といった普段見ない項目が並んでいます。
ここ最近の新品種は、甘さを追求したものが多く、甘いのだけど何かもうひとつといった傾向があります。総合的な味の評価で、コシヒカリをなかなか越えられないジレンマ。その点さすがに新潟県は着眼点が違いました。
お米に限らず、他の農産物、たとえば野菜や果物などの評価も、いまは「糖度」ばかりを追求している傾向があり、それが最大の売りになっている現状です。
しかしながら、植物工場や研究室などでは、LEDの光源の波長(ざっくりいうと光の色)によって、野菜の甘味や辛み、苦味が変わることが分かってきていて、たとえばハーブなどの香りを増したり、エグみを更に増強させることで、ある特定の料理に最適化させるといった研究が進んでいます(ちなみに植物工場の野菜はそんなに美味しくないというのが定評で、その使用目的も限られます。ですから、こういった研究も使用目的に合わせて作ることが前提になっています)。
そのうち「甘み」だけで農産物の特徴をアピールする時代も終わるような気がしますし、サンプルで頂いたこの「新潟103号」は、そういった農産物の先駆けとなるでしょう。2年後のデビュー時は、けっこうな衝撃を与えることだと思います。新潟県の新品種のアピールポイントが、「甘さ」ではないのですから。
試食を今日しました。食味分析チャート通りの食味でした。濃い味。
例えが極端で申し訳ないのですが、ごくふつうのお米が「アメリカンコーヒー」なら、この新潟103号は「エスプレッソ」でしょうか(食味分析チャートに「コク」、「ボディ感」の項目がありますので、それ自体まるでコーヒーの評価のようです)。もちろん甘さも強いくらいにありました。
ちなみに「コク」というのは喉越しのあとの重量感であり、「濃さ・ボディ感」という項目は、口の中に入れたときの重量感のことを指していると思われます。実際、食べてみても際立っていました。
切っ先の鋭い刀を思わせる、尖った新品種「新潟103号」。
ただ、お米の場合ボディ感やコクといったものは、白米の中のデンプンからは出ませんから、適正な精米処理が必要です。ここが一番のネックでしょう。米の表層の旨味層をどれくらい残すか、それと米の全体的な品質を高く保てるかといった点で、刃(ヤイバ)にもナマクラにもなります。
さてどうなることかと、今から楽しみの品種です。ここしばらく目が離せませんね。とりあえず2年後のデビュー時は、日本の農産物のターニングポイントになるだろうと思います。