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福井の新品種ポストコシヒカリを試食

久しぶりのブログ更新です。ホントはいろいろとお知らせが溜まっているのですけど、今回は先日某卸会社から頂いた福井の新品種のレビューです。正式名称がまだ決まっておらず「越南291号」として管理番号がつけられています。

なぜ、ポストコシヒカリ、コシヒカリの後継品種と言われているのかといえば、コシヒカリという品種がもともと福井県農業試験場で開発されたからです。コシヒカリといえば、新潟県のイメージが強いのですけど、生まれ故郷は福井。その福井のお米が結果的に全国で一番生産される品種となり、ほぼ全国で作付けされるようになり、日本のお米を代表する品種に。その後継品種を作る目的で今回の品種改良が進められています。ハードルのとても高い作業です。

早速実食(色味が少し変なのはお店の照明のせいです)

炊きあがりの香り爽やか。

食べたときの最初の一噛み目、ハリのある粒感とモチモチとした食感が印象的です。モチモチとした噛みごたえですが、粘りの舌溶けの部分があっさりとしています。粘りの重量感が希薄なところがコシヒカリとは違いますね。

この品種の一番の特徴は、喉越しでふくらんでいく丸みのある甘み。そしてその甘味のあとに現れるコク。軽さを感じさせるご飯でありながら、しっかりと甘みやコクのほうも主張してきます。あっさりソフトな印象ながら、素直にご飯の美味しさが引き出されていて、たぶんこれは雑味ともいえるトゲトゲした部分が希薄なせいでしょう。ストレートにご飯の美味しさが伝わってきます。

必要以上にパクパク食べてしまいがちなご飯でした。ちょっとヤバめ系。小さなお子さんや小学生が大好きになりそうな、甘くてモチモチのご飯です。

男の子の場合は、中学生や高校生になったら、もっとガッツリとした重量感のあるお米のほうが好きになりそうな気がしますが、女の子の場合は、学校のお弁当にいれてあげると、「お父さんお母さんありがとう」という気持ちに毎日なりそうな予感がします。冷めるとモチモチ感と甘みが増します。冷えても相変わらず粒離れはいいので、口のなかですぐにほぐれていき食べやすいです。スッキリとしているので、お弁当のおかずにとも相性がいいはずです。

今回頂いたサンプルがすでに白米の状態でしたので、お店の小米選別機で小米だけ落としています。これは弊店のいつものやり方です。なるべく小米などは落としたほうが品種の特徴が分かり易くレビューしやすいのです。

玄米を自分の好みに精米できたら、たぶんもっと面白いことになるんじゃないかと思いますが、なにしろデビュー前の品種ですから、サンプル玄米を配るわけにはいかないんでしょう。勝手に田んぼで育てちゃう人が出ますから。

白米の状態としては、少し乳白や胴割れなどがありましたから、気候や生産者、栽培方法などで改善されれば、さらに化けそうな予感。なかなか可能性を感じさせる品種です。充実の設備と良い生産者、そして美味しい精米をして将来販売できたら、きっと楽しいことでしょう。

お米マイスター全国ネットワーク会議 東京編 2017年2月

先日の日曜日は、「お米マイスター全国ネットワーク会議」という研修会に行ってきました。

富士山の噴火が、関東ローム層が生まれた原因のひとつと言われています。

「粘土、シルト(砂より小さく粘土より粗い砕屑物)、砂の混合物はロームと呼ばれ、空気が自由に循環し、水はけがよく、植物が養分を得やすいので、理想的な耕土となる」(築地書館「土の文明史」より引用。()内は引用者補足

飛行機からはたくさんの耕作地が見えて、同じ地域にある畑でも、色が濃かったり、薄かったり。

園芸をやっている方はご存知でしょうが、お店で売られている腐葉土は、「土」と書いてありますけど、ホントは土でなく、それこそ葉っぱや枝のクズです。それが細菌類によって分解されて黒くなっている状態。そういった有機物が土に鋤き込んであるかどうかで、土の色が変わります。黒い畑には、有機物が多い。

有機物が多いと、土の中の細菌類や虫などが増え、その作用で土壌の無機質を植物が摂取できるような形にします。窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄は、主に肥料から摂取できますが、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、銅、モリブデン、塩素などの微量要素は、土壌から摂ることになります。

人間の体の場合は、炭水化物、タンパク質、脂質といった主な栄養素と、ビタミン、ミネラルなどの副栄養素が、自らの健康を保つために大事なのですが、それと同じような感じです。

長年耕作していけば、だんだんそういった栄養素は土から無くなってきますので、畑の中の生物が土を分解して新たな栄養素を作る手助けをしなければならないのですが、もちろん、化学肥料や品種改良などで収穫減を乗り越える手もあります。

有機肥料による地力の向上と、新品種開発や化学肥料の使用と、どちらが優れているか?自然派か?それとも科学の力か?などという発想は、まあ現場の人からみればおそらくどうでもいい考え方じゃないのかなと思います。とにかく良いと思ったことはいろいろと試して結果を出していかないと、美味しいお米を作り続けるブランド産地なんて維持できないんじゃないだろうかというのが、今のところのボクの結論です。

研修会場では、生産者によるブースも多数あり、いくつかの産地の方とお話しをしました。皆さん、有機肥料を使用し減農薬減化学肥料栽培の特別栽培米であることをアピールされてましたから、さすがにブランド米を栽培している産地ばかりだなといった印象でした。あとは栽培方法の狙いが的確かどうか、現状を見極めているかどうかで、ブランド差がついているのかもしれません。生産者さんたちは、そこはもうプロの集団ですから、一米屋としては見守るだけですけども。

新品種もチラホラと見受けられました。今年の秋は新品種のデビューが続きますから、来年の参加が今から楽しみです。