昨年の9月に開催された佐賀の田んぼの視察会の続きを書いてなかったので、今回はその続きです。続きを書くまでに10ヶ月くらいかかってしまいました。。。
今回は、逢地の里の米シリーズ(逢地ヒノヒカリ・逢地夢しずく・逢地さがびより)を生産している佐賀県相知町にあるJA佐賀松浦カントリーエレベーター(以下、佐賀松浦CE)の様子をお伝えします。
“天使の詩プレミアム”を生産している城田西カントリーエレベーター(以下、城田西CE)を午前中に視察して、午後からはこちらの佐賀松浦CEを視察という行程でした。
カントリエレベーターの説明は、前回のエントリーに詳しく記載しておりますので、そちらをご参照ください。せっかちな方のために、ざっくりかいつまんで説明すると、カントリーエレベーターは、収穫したばかりの籾の状態のお米を、乾燥させて籾摺りして貯蔵する共同施設です(※籾摺りすることで外側の籾殻が抜けて、玄米の状態になります)。
全国にはたくさんのタイプのカントリーエレベーターがありますが、佐賀のカントリーエレベーターの充実ぶりは米業界では有名。非常に仕上がりの良い玄米が多く、佐賀米の高品質さの原因になっています。
佐賀県全体のカントリエレベーターの数は30基。小型のライスセンターが103基。この数はかなりのもので、普及率で見ると全国平均が29.3%であるのに対し、佐賀県の場合は82.5%です。
カントリーエレベーターの弱点は、“共同乾燥調製施設”ですので米が混ざってしまうこと。米名人のお米も、週末農業の方のお米も全部混ざってしまい均一になってしまいます。
そういった弱点をカバーするために、前述の城田西CEの場合は、篤農家や米名人のお米だけを集めるという枠を作って、良食味ながら栽培の難しい品種を育て、さらに選別作業を加えることで“天使の詩プレミアム”というブランド米を誕生させています。
そういったブランド化への工夫をさらに推し進めるために作られたのが、今回の佐賀松浦CE。「推し進める」と書きましたが、「エスカレートさせた」と書いたほうが正確かもしれない、その設備の充実ぶりをお伝え致します。
【JA佐賀松浦カントリーエレベーター】
右側半分が写真からはみ出していますが、佐賀松浦CEの写真です。総工費9億4700万円。日本の滝百選にも選ばれた“見返りの滝”から車で10分弱くらいの距離にあります。
【佐賀松浦CE内部、入口付近】
田んぼから収穫した稲は、まず乾燥させなければなりません。昔であれば、田んぼで「はざかけ(天日干し)」を行っていましたが、現在は乾燥機が主流。こだわりの産地であれば、お米の内側からじんわり乾燥させるために、遠赤外線を利用した乾燥機を使用しているところも多くあります。
こちらのカントリーはさらに一歩進んで、常温定湿乾燥という自然乾燥方式(ヤンマーの特許技術DAG)で乾燥を行っています。厳密に制御されたエアコン、と説明すると分かりやすいでしょうか。湿度と温度が整えられ制御された風で米の水分を調節していく方式です。ゆっくりじんわりと乾燥させていきます。
“乾燥貯蔵角型ビン”という荷受・乾燥・貯蔵の3役をこなす50t容量のビンが36基。このビンの中で収穫した籾を撹拌させながら乾燥させていきます。乾燥が終われば、厳密な温湿度管理のもと、そのまま貯蔵という形です。このビンは36基ありますので、36種類のお米を区分して保管できるわけです。
さらに貯蔵用の100tビンが9基ありますので、このカントリーエレベーターでは最大で45種類のお米を最適の状態で貯蔵できます。そういった45の貯蔵ビンの中に、佐賀米ブランドの代表格である“逢地ヒノヒカリ”“逢地さがびより”“逢地夢しずく”などが選別され保管されているといった状況です。
責任者の方に伺ったお話では、それでもビンが足りなくなってきているような状況だとか。
写真奥の壁の向こうに、50tビンやら100tビンがあります。もちろん断熱材等の壁で囲われていますので、こちらからは見えません。
しかし、どんなに良い設備でも、メンテナンスが行き届いていなければ、その性能を発揮しません。ですから、こういった視察会のときは、床の掃除の状態や機械内部のメンテナンスの状態を、できる限りチェックしていきます。写真からも分かりますが、手入れが行き届いていました。
【色彩選別機】
写真は、玄米の色彩選別機です。綺麗な玄米と不良玄米(その他石などの異物やガラス片まで)をセンサーで識別して、瞬時に分けていく機械です。非常に高価。
スーパーなどの棚に並んでいる玄米が、普通の白米よりも高値で売られていることがありますが、それは玄米用にこういった専用の機械を通していることも原因のひとつ。異物やガラス片が入っていたら危険ですし、玄米の見た目が悪いと売れませんから。
佐賀のカントリーエレベーター経由の玄米は、色彩選別機に予めかけてあるため、米屋としてもありがたいのです。精度も抜群。こういった状態の玄米なら、異物などで精米機が傷む心配がありませんし、不良玄米が取り除かれていますので、食味も信頼できます。
【未熟粒出荷設備】
色彩選別機で不良玄米が分けられていますから、写真にある未熟粒(未熟粒の説明はこちら→■)専用の出荷設備もありました。飼料など使用目的によっては充分使えます。お米は余すところがない穀物です。
佐賀松浦CEでは、籾の状態のまま貯蔵しているため、出荷が決まってから籾摺りと調製を行っていきます。そのため、お米の食味が落ちがちな今の時期でも、全く問題ないのです。そういった意味でも佐賀米の安心感、高品質さがあります。
カントリーエレベーターの前では、米ぬかを肥料にした循環型栽培の試験栽培をしている田んぼがありましたので、そちらも見学。
将来的に全国で販売できるような体制が整えば、今回の視察会に集まった関東や関西、各地方の米穀店が販売していくことになると思います。そうやってトレンドができていきます。
左側の田んぼと右側の田んぼで、稲穂の色が違うことが分かりますか?左側が現在の栽培方法のもの。右側が循環型栽培のものです。同じ品種のお米で比較しやすいように、隣の区画同士で栽培されていました。
こういった将来への布石を打っているところも心憎い。佐賀県相知町のお米には、これらかもお世話になりそうです。